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​メインストーリー第七話 前編

■第七話

軽音楽部、部室にて

慧士「あれ?他の二人は?」
涼夏「あ…あの、ちょっと…色々ありまして…」
慧士「……いろいろ、ね」
慧士「そうだ。曲、完成したよ」
涼夏「え!?ホントですか?ありがとうございます!……あ…でも…」
涼夏を見つめる慧士
涼夏「みんな…バラバラになっちゃった…」
慧士「(溜息)修復は難しそう?」
涼夏「分から…ないです。こんなの初めてだし、いつもなら笑って終わるような小さな喧嘩?はありましたけど…」
慧士「涼夏さん、友達って…一体何なんだろうね」
涼夏「え?」
慧士「友達に限らず、人ってさ」
涼夏「どういうこと…ですか?」
慧士「共に過ごし、楽しい事も辛い事も共有する。でも時として裏切りや離縁すらある。それが人の縁…として片付けるには簡単すぎる。確かに一期一会もあるだろう。でもさ、君たちみたいにずっと仲良しでここまで想いを共有し、歩んで来た関係性は人生においてとても大切な物だと思うよ」
涼夏「……」
慧士「関係性は相手があってこそ成り立つ。良い影響も悪い影響もね。涼夏さんは…もうどうしたいのか心では決まっているんだろう?」
涼夏「…ええ」
慧士「だったら、今度は君が二人を動かす番…じゃないかな?」

涼夏「……!!」
涼夏「そうですね…先生、私…行ってきます!」
慧士「うん」
部室を後にする涼夏
慧士「曲は完成した…だけど、そこに生を吹き込むか死を吹き込むかは…君たち次第だ…」

涼夏「七海!待って!」
七海「…涼夏」
涼夏「ちょっと話しよ?」
七海「…ごめん、少しそっとしておいて」
涼夏「…七海」
拳を強く握る涼夏
涼夏「私たちの曲…完成したよ」
七海「…!!」
涼夏「だから!またみんなでやろうよ!」
振り向く七海
七海「無理だよ…もう」
そう言うと涼夏に背を向け歩き出す
その顔には涙が溢れていた
涼夏「七海…」


場面変わって


冬馬「ここ姉、最近どうしたの?ずっと元気ないし」
心優「なーんでもないよ〜…」
冬馬「はぐらかすなんて、らしくないね」
心優「ふゆくんだったらさ、喧嘩して相手からすっごい傷付く言葉言われて…仲直り出来る?」
冬馬「うーん…相手次第かな?大切な人だったら、何でそういう事を言ったのかな…とか、どうしてそうなっちゃったんかなとか相手の事を知ろうと思うけど」
心優「ふーん…大人になったね」
冬馬「え?」
心優「いつまでも弟のままじゃないかー。段々と…頼もしい男性になってきたね」
冬馬「……ここ姉、悩んでる事ってねーちゃんとか七海さんとの事でしょ?」
心優「すずの弟だもん知ってるかー」
冬馬「まぁね…でも、少しでも相談してくれれば良かったのに」
心優「あたしにもプライドってもんがあんのー」
心優「これでもさ、あたしなりに頑張ってたんだよ?なのに…あんなこと言わなくても…」
冬馬「……七海さん、何か悩みとか抱え込んでる事があるとか…?」
心優「さぁ?なな、いっつも自分の話してこないんだよね。だから、うちらの中で悩み事を相談しあったりとか全然ないかなー」
冬馬「そっか〜…」
心優「あーでも、拓海さんが海外に留学するって聞いたとか、なんか分からないけど、いつからかすごい暗い顔をするようになったの何回か見たかなぁ」
冬馬「もしかして…それじゃない?」
心優「なに?それって?」
冬馬「拓海さんと離れ離れになっちゃうとか、後は何か抱え込む程の事があったとか…」
心優「そゆことかー。まぁ…あたしもふゆくんと離れ離れになるかも?とかになったら無理だわー」
心優「あいつー、何考えてんだろ…」
冬馬「話してみたら?」
心優「はぁ!?あたしから!?やだよー、あんなこと言われて…なんでこっちから…」
冬馬「そう言ってても始まらないよ?」
心優「ふゆくんは仲直りして欲しいの?」
冬馬「それはそうだよ。落ち込んでるここ姉なんて、らしくないよ。それに…」
心優「それに?」
冬馬「ねーちゃんや七海さんと楽しくしてるここ姉が一番好きだよ!」
心優「…はっ……バカ…」
冬馬「俺も一緒に行ってあげるから、ね?」
心優「うぅーー!!わかったよー!そのかわり…あとでぎゅー…してね」
冬馬「ふふっ…いいよ。だから、頑張ろう!」
心優「…うん!」


夢芽「心優…良かった。素敵なパートナーに巡り会えたんだね。その笑顔…わたしも見たかったな…」

 

心優「…え?…だれ?いまの…」

心優「あの子……どこかで…」

冬馬「ここ姉!?どしたの?早く行こう!」

心優「あ…!ごめん!」
 


心優「すず!ななは!?」
涼夏「ダメ…電話も出ないし、家にも帰ってないって…」
心優「あのバカ…」
冬馬「ねーちゃん、どこか心当たりは?」
涼夏「うーん…私も色々当たってみたんだけど…」
冬馬「そっか…手当たり次第、探すしかないか…」

***「心優…こっち……」

心優「え?」

***「わたし…またみんなと歌って踊りたいよ…」

心優「え…なな…??」

夢芽、心優を手招く


心優「え……はっ!?待って!…多分、あそこに居る…あたしたちが…初めて喧嘩した場所」
涼夏「え!?普通、思い出の場所とかそーゆーとこに居るもんじゃないの?」
心優「…声が聞こえたの
…導いてくれた…だからきっと!」
涼夏「ん?」
心優「いいから!行くよ二人とも!」
涼夏「ちょっ…待ってよ心優ー!」

場面変わって

七海「やっぱりあれは夢じゃなくて…私の…」
***「大丈夫…大丈夫だから」
七海「たっくん…私…どうしたらいいの」
***「そう、拓海もあなたを…いいえ、みんなあなたの事を…」
着信音が鳴る
七海「………!!たっくん!?」
七海「もしもし…」
拓海「七海…大丈夫?」
七海「…うん」
拓海「何か…あったんだね」
七海「うん」
拓海「どうしたの?話してくれる?」
七海「…ココ達と喧嘩して…もう私達やり直せないかも…」
拓海「どうしてそんな…何があったの?」
七海「ほんの些細なきっかけだったんだ、最初は。でも段々と私もここも抑えが効かなくなっていって…私…酷いこと言っちゃった…」
拓海「そっか…仲直り、出来そう?」
七海「…もう…無理かな……」
拓海「………」溜息
七海「あと……」
拓海「うん?どうしたの?」
七海「前からずっと…なんだけど、私…予知夢みたいなのをよく見たの」
七海「それでね…それで…ね……たっくんが、留学してすぐに事故で……」
拓海「…!?」
七海「たっくんが死んじゃったの…!ねぇ!?たっくん大丈夫だよね!?こんなのただの夢だよね?ねえ!?……大丈夫だよって言って……」
拓海「…七海」
拓海「大丈夫、僕はそうならないよ。離れていても…僕は七海と一緒だよ」
七海「…たっくん」

心優「あ!いたいた!すずー!こっちー!」
涼夏「七海ー!もうすっごい探したんだよ」
七海「ココ…すず…」
七海「ごめんね、たっくん。またかけるね」
拓海「うん、大丈夫だよ」
拓海(七海…頑張って)

心優「なーに泣いてんの?バカ七海」
涼夏「心優!やめなよー!」
冬馬「ねーちゃん」
涼夏を制止する冬馬
心優「なな…最初に言わせて貰うけどさーなんで酷いこと言われたあたしから謝んなきゃなんないの?って最初は思ってた。ふゆくんに言われるまではね。でもさ、ななは奥手だって…前に言ってたよね。あたしなんかさーそんなの関係なく言っちゃうタイプだから…今回も…あたしから言うね」
心優「なな!許してあげるから、また一緒にコンテスト目指して…やろう!」
七海「…ここぉ〜!」
心優「もぉ〜なんで泣いてばっかなのー?うふふ…ま、あたしみたいに泣きついてぎゅーしてくれる彼氏が近くに居ないし、しゃーないかぁー」
心優に抱き付くように泣く七海

慧士「良かった…これで君の曲は完成…したよ」
光景を見ていた慧士が呟く
隣には夢芽が立っていた
夢芽「ホント…良かった…心優も、涼夏も…また笑って居られる二人、とても素敵だよ…」


翌日

慧士「お待たせ。確かに渡したからね」
七海「はい!ありがとうございます!」
心優「にしても先生さぁー最初マジで作ってないから焦ったしー」
涼夏「そ、そうね…今だから言えるけど…あはは」
慧士「曲ってさ、ただの音かもしれないけど、そこには人の想いが込められていてね。君たちの曲は君たちから奏でられる音、だからその想いがないと作れないし、完成しないってわけ」
涼夏「奥が深いですね」
七海「じゃ、私たちの曲で…コンテスト優勝目指して!」
(心優・涼夏)「うん」
三人「行こう!!」


楓澄「わ〜!七海達、いい感じに順位伸びてるね〜!」
凪咲「うんうん!優勝したらすごいよねー!」
控田くん「なになにー?二人とも何見てんの?」
楓澄「七海たちのライブコンテストだよ〜」
真白ちゃん「えー!そんなのに出てたの?すごーい!」
せっちゃん「ねーもっち〜これ見た?」
もっちー「あーあれでしょ?七海達のライブ!すごいよねー!」

エンドロール後

七海「優勝…出来なかったね…」
涼夏「7位とか…七海繋がりで七…だからかな?あはは…」
心優「すずー…なーにつまんないこと言ってんの?」
七海「まぁでもやり切ったし、楽しかったし!」
涼夏「そうだね!」
心優「たしかに」
七海「二人とも…ホントありがとう!」
心優「あはは…なーに今更、あたしたち…友達じゃーん」
涼夏「そうだよ!ありがとう…七海」


場面変わって


心優「じゃ、うちらはここで」
涼夏「頑張ってね!七海!ファイト!」
七海「うー…緊張するなぁ〜」
心優「ここで告っちゃわないと一生出来ないよー?」
涼夏「そうだよー!今しかなぁぁぁーい!!」
心優「…なんか久しぶりにすずのキモいキャラ見た気がする…」
七海「あはは!たしかにー」
涼夏「な、なによー…そんなバカにすると斬艦刀でぶった斬るわよー!!」
心優「あー…最終回だからついにイカれたかー」
七海「うふふ…元気をくれてありがとね!すず!ココ!」
にっこり笑う二人
七海「じゃ、私…行ってくるね!」
(心優・涼夏)「うん」


空港にて


拓海「七海、ごめんね。見送りに来て貰っちゃって」
七海「ううん、いいの。たっくんに会いたかったし」
拓海「コンテスト、惜しかったね」
七海「うん…あと少しだった」
拓海「でもみんな頑張ったよ」
七海「うん…私ね、出場して良かったって思ってる。色々あったけど…みんなで同じ夢を見て、駆け抜けて、やっと辿り着いたんだ」
七海「たっくんほど立派なものじゃないけど…自分自身が輝ける道!」
拓海「そっか、よかった。おめでとう…七海!」
七海「えへへ…ありがと」
拓海「これから七海はどうするの?」
七海「私ね、音大に行こうと思う。せっかく吹奏楽やってきたんだし、あと歌うのもやっぱり好きだし」
拓海「うん、じゃあ…いつかは共にホールに立って演奏しよう」
七海「そ、そうだね!いいねそれ!」
拓海「あはは!その代わり、今度は…待ってないからね!ちゃんと…自分自身の道を駆け抜けて…そして、僕の側で…僕達の旋律を奏でよう!」
七海「うん!」

アナウンスが流れる

七海「あ…時間?」
拓海「うん、そろそろ。でも…次の便もあるから大丈夫だよ」
七海「そ…じゃあさ…もう少しだけ…時間をくれない?」
拓海「七海……うん、いいよ」

七海「たっくん…私ね、ううん!今の私なら胸を張って言える。私、たっくんの事が好きだよ。大好き」
拓海「七海…僕もだよ。ずっと…小さい頃から」
笑顔で抱き合う二人

七海「ね、満天の星の下で約束した事、覚えてる?」
拓海「うん…」
七海「いつか…叶うように…ね?」
拓海「そうだね」

拓海「それじゃ、行くね」
七海「うん、気をつけて」
拓海「今度はきっと大丈夫!」
七海「そうだね!そんな気がする!」
拓海を見送る七海

七海「たっくん…また会おうね」
後ろを振り返る七海

するとそこには…!?

後編へつづく

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